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オーバーコレクションとは?

2026.11.02

オーバーコレクションとは?矯正治療で「あえて少し行き過ぎた位置」まで歯を動かす理由

はじめに

矯正治療のシミュレーションを見ていると、

「最終的な歯の位置が少し行き過ぎているように見える」

「前歯をこんなに深く圧下して大丈夫?」

「ねじれていた歯を、反対方向まで少し回しているのはなぜ?」

と疑問に感じることがあります。

これは、治療計画にオーバーコレクション(overcorrection)が組み込まれている可能性があります。

オーバーコレクションとは、簡単にいうと、

最終的に目標とする位置よりも、あえて少し多めに歯を動かすよう治療計画を設定すること

です。

日本語では「過矯正」と表現されることもあります。

ただし、「必要以上に歯を動かしている」という意味ではありません。

実際の矯正治療では、

  • 計画した歯の移動が100%そのまま実現するとは限らない
  • 歯の移動によって予測性が異なる
  • 装置には力学的な限界がある
  • 治療後には後戻りが起こる可能性がある

ため、それらをあらかじめ考慮して治療計画へ補正を加えることがあります。

特にマウスピース型矯正装置(アライナー)では、

デジタルシミュレーション上で設定した歯の移動量と、実際に達成される歯の移動量には差が生じることがあります。

近年のレビューでも、回転、トルク、圧下、過蓋咬合の改善などでは計画値と実際の治療結果に差が生じることが報告されています。

そのため、

「最終シミュレーションが理想的な位置になっている=実際の歯も必ずその位置まで動く」

とは限りません。

オーバーコレクションは、この「計画」と「実際」の差を見越して利用される治療設計のひとつです。

この記事では、

  • オーバーコレクションとは何か
  • なぜ少し行き過ぎた位置まで設定するのか
  • アライナー矯正でオーバーコレクションが重要な理由
  • 回転のオーバーコレクション
  • 圧下のオーバーコレクション
  • トルクのオーバーコレクション
  • 抜歯矯正でのオーバーコレクション
  • 後戻りを見越したオーバーコレクション
  • オーバーコレクションをすれば必ず計画どおりになるのか

まで詳しく解説します。


オーバーコレクションとは?

オーバーコレクションとは、治療目標に対して、あらかじめ少し多めの補正を加えることです。

たとえば、ある歯を10度回転させる必要があるとします。

もしその移動が100%再現されるのであれば、治療計画上も10度動かせばよいことになります。

しかし、仮に実際には計画した回転の一部しか発現しにくいことが分かっている場合、

計画上は10度より大きく回転させる

という考え方があります。

これがオーバーコレクションです。

ただし、

「予測性が70%だから、すべて一律に約1.43倍動かせばよい」

という単純なものではありません。

歯の移動の予測性は、

  • 歯の種類
  • 歯冠形態
  • 歯根形態
  • 移動方向
  • 移動量
  • アタッチメント
  • IPR
  • ステージング
  • アライナーの材料や形態
  • 患者さまの装着時間
  • 歯槽骨や歯周組織

などによって変化するからです。

2025年の回転移動についてのシステマティックレビューでも、アライナーによる回転の正確性にはかなり幅があり、特に上顎犬歯や小臼歯などでは予測性が低くなる傾向が報告されています。また、オーバーコレクションの有用性については可能性が示されている一方、一定量を全症例へ適用できるほどエビデンスは確立していません。

つまり、

オーバーコレクションとは「とりあえず多めに動かすこと」ではなく、実際の歯の反応を予測して治療計画を補正すること

なのです。


なぜ計画した歯の移動が100%起こらないの?

ここを理解すると、オーバーコレクションの意味が分かりやすくなります。

デジタルシミュレーション上では、歯を自由に動かすことができます。

歯を、

  • 1mm移動する
  • 5度回転する
  • 2mm圧下する
  • 歯根を舌側へ移動する

と設定すれば、画面上ではその位置へ移動します。

しかし、実際の歯はコンピューター上の物体ではありません。

歯根膜と歯槽骨に囲まれた生体組織の中で動きます。

さらに、アライナーは歯へ直接モーターのような力を加えるわけではありません。

アライナーの変形によって発生する力を、歯冠へ伝えています。

そのため、

シミュレーションで設定した移動量=実際の歯の移動量

とは限りません。

2026年のアライナー治療に関する大規模なスコーピングレビューでも、移動の種類によって計画と実際の結果には差があり、回転、トルク、圧下、オーバーバイト改善などでアンダーコレクションが生じることが報告されています。


オーバーコレクションには大きく2つの考え方がある

患者さま向けにオーバーコレクションを説明するときには、2種類に分けると理解しやすくなります。

① 治療中の「予測性」を補うためのオーバーコレクション

これは特にアライナー治療で重要です。

計画上、

「2mm圧下する」

と設定しても、実際には2mmすべてが発現するとは限りません。

そこで、最終的に必要な移動量を得るために、計画上はそれより大きな移動量を設定することがあります。

つまり、

予定量より少なく動くことを見越して、あらかじめ多めに設定する

という考え方です。

② 治療後の「後戻り」を見越したオーバーコレクション

矯正治療後には、歯が元の位置へ戻ろうとすることがあります。

これを後戻り(relapse)といいます。

特に強く回転していた歯などでは、治療後の安定性を考慮する必要があります。

そのため症例によっては、治療後の変化を見越して少し行き過ぎた位置まで補正することがあります。

ただし、

オーバーコレクションをしたから保定装置が不要になるわけではありません。

矯正治療後には、歯を新しい位置へ安定させるための保定が重要です。Cochrane Reviewでも、矯正治療後の歯には後戻りする傾向があり、リテーナーによる保定が必要になることが整理されています。


回転のオーバーコレクション

オーバーコレクションが検討される代表的な歯の移動のひとつが回転です。

回転とは、歯を長軸の周りに回す移動です。

特に、

  • 犬歯
  • 小臼歯

などは歯冠の形が丸く、アライナーが十分な回転力を伝えるのが難しいことがあります。

そのため、治療計画上では最終位置を少し越えて回転させる設定を行うことがあります。


なぜ犬歯や小臼歯の回転は難しい?

アライナーは歯冠を覆って力を加えます。

しかし、丸みの強い歯に対して回転力を加えようとすると、アライナーが歯の表面を滑るような状態になり、十分なモーメントを発生させにくいことがあります。

そこで、

  • アタッチメント
  • IPR
  • 適切なステージング
  • オーバーコレクション

などを組み合わせます。

2025年のシステマティックレビューでは、アライナーによる回転移動の正確性は研究間で36〜85%と幅があり、平均では約65%と報告されています。ただし研究の異質性が大きく、特定の数字をすべての患者さまへそのまま当てはめることはできません。

したがって、

「回転は必ず○%多く設定する」という固定ルールではありません。


回転のオーバーコレクションは後戻り対策にも使われる?

使われることがあります。

強く回転していた歯は、治療後に元の方向へ戻ろうとする可能性があります。

過去の研究では、20度を超える回転を改善した上顎前歯で、保定終了後に平均7.3度の回転方向への変化が認められたという報告があります。

ただし、後戻りには、

  • 元々の歯の位置
  • 歯周組織
  • 咬合
  • 保定方法
  • 保定期間
  • 成長や加齢

など多くの要因が関係します。

したがって、

「回転歯は必ず○度オーバーコレクションする」と一律には決められません。

そして、オーバーコレクションを行ったとしても、適切な保定は必要です。


ディープバイトではなぜオーバーコレクションをすることがある?

ディープバイト(過蓋咬合)とは、上下の前歯の垂直的な重なりが深い噛み合わせです。

治療では、

  • 前歯を圧下する
  • 奥歯を挺出する
  • 前歯の傾斜を調整する

などによってオーバーバイトを改善します。

しかし、アライナーによるディープバイト改善では、計画した量がそのまま実現しないことがあります。

2025年のシステマティックレビューでは、アライナーによるディープバイト改善の正確性は研究間で約33〜49%と報告され、計画した改善量より実際の改善量が小さい傾向が認められました。研究の質は低いものの、著者らは目的とする治療結果を得るためにオーバーコレクションや追加修正が必要になる場合があると結論づけています。

つまり、

最終的に2mmの改善が必要だから、シミュレーション上も2mmだけ改善させれば十分とは限らない

ということです。


圧下のオーバーコレクション

歯を歯槽骨の方向へ押し込むように移動させることを圧下(intrusion)といいます。

ディープバイトの改善などで使用します。

アライナーでは前歯の圧下を設定することがありますが、計画した圧下量がそのまま発現するとは限りません。

そのため症例によっては、実際に必要な位置よりも深く圧下する設定を行うことがあります。

2025年には、ディープバイト症例における前歯圧下のオーバーコレクションを直接評価した研究も報告されています。

ただし、圧下量を大きくすればするほど良いわけではありません。

圧下には、

  • 歯根の位置
  • 歯槽骨
  • 前歯の傾斜
  • 咬合平面
  • 顔貌
  • 歯周組織

なども関係します。

したがって、必要以上の圧下を無条件に設定するものではありません。


トルクのオーバーコレクション

トルクとは、簡単にいうと歯冠だけではなく歯根の頬舌的位置までコントロールする歯の移動です。

たとえば、前歯を後方へ移動させるときに、歯冠だけが後ろへ倒れてしまうことがあります。

見た目としては前歯が引っ込んでいても、歯根が十分に移動していない状態です。

このような場合には、前歯のトルクを適切にコントロールする必要があります。

アライナー治療ではトルクが計画より十分に発現しないことがあります。

2026年のスコーピングレビューでも、トルクについては計画値に対する発現不足が報告されており、一定のオーバーコレクション戦略が検討されています。ただし、研究は主としてInvisalignを対象としており、症例や装置を問わず同じ数値を使用できるわけではありません。


ワイヤー矯正にもオーバーコレクションはある?

あります。

オーバーコレクションはマウスピース矯正だけの考え方ではありません。

ワイヤー矯正でも、

  • 回転
  • トルク
  • 噛み合わせ
  • スペース
  • 歯根の角度

などについて、治療後の変化や装置の力学的特性を考えて補正することがあります。

たとえばブラケットとワイヤーの間にはわずかな遊びがあります。

ワイヤーへトルクを付与しても、そのすべてが歯へ100%伝達されるとは限りません。

また、強く回転していた歯では治療後の後戻りを考慮する場合があります。

つまり、

「計画した量」と「実際に歯へ発現する量」が一致しないという問題は、アライナーだけに存在するものではありません。


抜歯矯正でもオーバーコレクションが重要になることがある

抜歯矯正では、

  • 前歯の後退
  • 前歯のトルク
  • 奥歯の固定
  • 抜歯スペースの閉鎖
  • 歯根の平行化

など、複雑な歯の移動が必要になります。

特にアライナーで抜歯スペースを閉じる場合、計画どおりの歯体移動ではなく、

  • 奥歯が前方へ傾斜する
  • 前歯が後方へ傾斜する
  • 歯根が十分に移動しない

といった変化が起こることがあります。

2025年のシステマティックレビュー・メタ解析では、抜歯を伴うアライナー治療で、上顎第一大臼歯の近心傾斜、前歯後退量の不足、歯根の平行性や固定源の問題など、計画と実際の結果に差が認められています。著者らは、戦略的なオーバーコレクションや補助的な力学の必要性を指摘しています。

つまり抜歯症例では、

「スペースが閉じたか」だけではなく、「どの歯がどのように動いてスペースが閉じたか」

を見る必要があります。


奥歯の遠心移動でもオーバーコレクションすることがある?

あります。

奥歯を後方へ移動させる遠心移動では、歯冠だけが後方へ傾斜し、歯根が十分についてこない場合があります。

また、予定した移動量のすべてが達成されないこともあります。

2025年のシステマティックレビューでは、アライナーによる上顎大臼歯の遠心移動の予測性は平均約61%と報告され、固定源の補強やオーバーコレクションを検討すべきとされています。ただし、エビデンスの質は非常に低く、数字を一律に臨床適用できるものではありません。

したがって、

遠心移動を3mm行いたいから、単純に3mmだけ設定すれば必ず3mm動くとは限りません。


オーバーコレクションとステージングは違う

この2つは混同されやすい概念です。

ステージングとは、「どの歯を、いつ、どの順番で動かすか」 という治療順序の設計です。

一方、

オーバーコレクションとは、「必要な最終結果を得るために、計画上の移動量へ補正を加えること」 です。

たとえば犬歯を回転させる場合、

まずスペースを作り、次に犬歯を回転させる。

これはステージングです。

さらに、その犬歯が予定どおり回転しにくいことを見越して、最終位置より少し多めの回転を設定する。

これはオーバーコレクションです。

両者は別の考え方ですが、実際の治療計画では組み合わせて使用します。


オーバーコレクションと追加アライナーも違う

追加アライナー、いわゆるリファインメントとも意味が異なります。

オーバーコレクションは、

治療開始前または治療計画を作成するときに、予測される不足分を先回りして補正する方法

です。

一方、追加アライナーは、

実際の歯の移動を確認したあと、残ったズレを再評価して治療計画を作り直す方法

です。

つまり、

オーバーコレクションは予測的な補正、

追加アライナーは実際の結果を確認したあとの修正

と考えると分かりやすいでしょう。


オーバーコレクションを入れれば追加アライナーは不要?

そうとは限りません。

歯の移動には個人差があります。

同じ歯を同じ量だけ動かす計画でも、患者さまによって実際の移動量は異なります。

さらに、

  • 装着時間
  • アタッチメント
  • IPR
  • 顎間ゴム
  • 歯冠形態
  • 歯根形態
  • 歯周組織
  • 治療途中の噛み合わせ

なども影響します。

そのため、オーバーコレクションを適切に設定していても、治療途中で追加修正が必要になることがあります。

オーバーコレクションは「絶対に計画どおり動かす方法」ではなく、予測性を高めるための治療設計のひとつです。


オーバーコレクションは大きいほど良い?

いいえ。

ここは非常に重要です。

「予定より少なく動くなら、最初からものすごく多めに設定しておけばよい」

というものではありません。

過剰なオーバーコレクションを設定すると、

  • 必要以上の歯の移動
  • 噛み合わせの変化
  • 歯根位置の問題
  • 歯槽骨との位置関係の問題
  • アライナーの適合不良

などにつながる可能性があります。

また、過剰な移動量を一度に設定すると、歯が計画についてこられず、かえってトラッキング不良を起こす可能性があります。

つまり、

オーバーコレクションにも適切な量があります。


「予測性60%なら40%追加」は正しい?

必ずしも正しくありません。

研究で「予測性60%」と報告されていたとしても、その数字は、

  • 特定のアライナーシステム
  • 特定の歯
  • 特定の移動量
  • 特定の患者集団
  • 特定の測定方法

から得られた平均値です。

患者さん一人ひとりに、そのまま適用できる数字ではありません。

さらに、予測性は移動量によって変化する可能性があります。

したがって、

論文の平均予測性を単純な掛け算として治療計画へ使用することは適切ではありません。

2026年のレビューでも、圧下・回転・トルク・拡大などについてオーバーコレクション量の目安が報告されていますが、研究の異質性が大きく、普遍的な基準として使用すべきではないと明確に注意されています。


最終シミュレーションが少し変に見えるのは失敗?

必ずしもそうではありません。

たとえば、最終シミュレーションで、

「前歯が少し入りすぎている」

「犬歯が少し回りすぎている」

「噛み合わせが浅すぎるように見える」

という場合があります。

それが意図的なオーバーコレクションであれば、実際の治療結果との差を見越して設定されている可能性があります。

ただし、

すべての不自然な最終シミュレーションがオーバーコレクションというわけではありません。

単に治療計画の設定に問題がある可能性もあります。

重要なのは、

「なぜその位置まで動かしているのか」を説明できる治療計画になっていること

です。


最終シミュレーションだけを見ても治療計画の良し悪しは分からない

マウスピース矯正では、治療前に非常にきれいな3Dシミュレーションを見ることができます。

しかし、シミュレーションはあくまで治療計画です。

実際の治療結果を保証するものではありません。

確認したいのは、

  • どの歯を動かすのか
  • どの順番で動かすのか
  • どの移動が難しいのか
  • どこにオーバーコレクションを入れているのか
  • なぜその補正が必要なのか
  • どの段階で実際の歯の動きを評価するのか

という部分です。

つまり、

治療計画では「最終位置」と同じくらい、「そこへ到達する過程」と「計画と実際のズレへの対応」が重要です。


Q&A|オーバーコレクションについてよくある質問

Q1. オーバーコレクションとは何ですか?

最終的に必要な治療結果を得るために、治療計画上では目標位置より少し多めに歯を動かすよう補正することです。

計画した歯の移動が100%実現しないことや、治療後の後戻りなどを考慮して行うことがあります。

Q2. オーバーコレクションはマウスピース矯正だけですか?

いいえ。

ワイヤー矯正でも、回転、トルク、噛み合わせなどについて治療後の変化や装置の特性を考慮した補正を行うことがあります。

ただし、デジタル上で歯の移動量を細かく設定できるアライナー治療では、オーバーコレクションが治療計画上見えやすくなっています。

Q3. オーバーコレクションをすると歯が動きすぎませんか?

適切に設定されていれば、最終的な治療目標へ近づけるための補正として使用します。

ただし、必要以上のオーバーコレクションは適切ではありません。

治療中に実際の歯の位置を確認しながら判断することが重要です。

Q4. どの歯の移動でオーバーコレクションを使いますか?

代表的には、

  • 回転
  • 圧下
  • トルク
  • ディープバイト改善
  • 遠心移動
  • 抜歯スペース閉鎖

などで検討されることがあります。

ただし、すべての患者さんに必要なわけではありません。

Q5. オーバーコレクションをすれば後戻りしませんか?

いいえ。

オーバーコレクションと保定は別です。

矯正治療後には歯が元の位置へ戻ろうとする傾向があるため、治療後にはリテーナーなどによる保定が重要です。


歯列矯正専門医からのアドバイス

オーバーコレクションを理解するときに最も重要なのは、

「シミュレーション上の100%と、実際の口腔内の100%は同じではない」

ということです。

デジタル治療計画では、歯を自由に動かすことができます。

しかし実際の歯の移動には、

  • 生物学的な反応
  • 歯根膜
  • 歯槽骨
  • 歯根形態
  • アライナーの変形
  • アタッチメント
  • 固定源
  • 隣接歯との接触
  • 噛み合わせ

などが関係します。

そのため、矯正医は単に、「最終的にこの位置へ歯を並べたい」 と考えるだけではありません。

この移動はどの程度再現できるのか。

どの歯から動かすのか。

どこにスペースを作るのか。

どの移動を分割するのか。

どこにオーバーコレクションを設定するのか。

実際の歯が計画についてこなかった場合にどう修正するのか。

まで考えて治療計画を作ります。

ここで、前回の記事で解説したステージングともつながります。

ステージングは、「どの順番で動かすか」という設計です。

オーバーコレクションは、「どのくらい余分に補正しておくか」という設計です。

さらに治療中には、実際に計画どおり動いているかを確認します。

つまりアライナー治療では、

診断 → 治療目標 → ステージング → 力学設計 → オーバーコレクション → モニタリング → 必要に応じた修正

という一連の流れが重要です。

オーバーコレクションを大きく設定すれば、治療技術が高いわけではありません。

反対に、まったくオーバーコレクションを使わないことが優れているわけでもありません。

大切なのは、

どの歯の、どの移動が、どの程度予定どおりに起こりにくいのかを予測し、その症例に必要な補正を行うこと

です。

そして、治療計画だけに頼るのではなく、実際の歯の移動を確認しながら必要に応じて修正します。

オーバーコレクションとは、「多めに動かす技術」ではなく、「計画と現実の差をあらかじめ考慮する治療設計」なのです。


日本デジタル矯正歯科学会認定医による、精密な治療設計

当院の院長は、日本デジタル矯正歯科学会の認定医資格を有しています。

デジタル矯正において重要なのは、単に歯列をスキャンし、コンピューター上で理想的な歯並びをシミュレーションすることではありません。

歯冠・歯根の三次元的位置関係、歯軸、歯槽骨の形態、咬合関係、固定源、

そして歯の移動に伴う生体力学的な反作用まで考慮し、実際の口腔内で再現可能な治療計画へ落とし込むことが重要です。

特にマウスピース矯正では、歯の移動様式や移動量だけでなく、

ステージング、アタッチメントの設計、固定源の管理、トルクコントロールなど、複数の要素を統合的に考える必要があります。

 

例えば、前歯を後退させる場合でも、

歯冠だけが内側に傾くのか、歯根の位置を維持しながら移動させるのか、

歯根まで含めて歯体移動を目指すのかによって、必要な力学設計は異なります。

また、抜歯症例では、抜歯スペースの閉鎖量だけでなく、

前歯と臼歯の移動量の配分、アンカレッジコントロール、歯根の平行性、最終的な咬合関係まで見据えた治療設計が求められます。

 

こうした複雑な歯の移動を実現するためには、最終的な歯列の形態だけを見るのではなく、

「どの歯を、どの方向へ、どのタイミングで動かし、どの歯を固定源として利用するのか」という治療のプロセスそのものを設計することが欠かせません。

 

当院では、精密検査と診断を基盤に、デジタルシミュレーションを活用しながら、

歯列・歯根・咬合・顔貌の調和を考慮した治療計画の立案を重視しています。

また、治療開始時の計画だけで完結させるのではなく、

実際の歯の移動と計画との差を評価し、必要に応じて治療方針や移動計画を見直すことも重要と考えています。

デジタル技術は、理想的な歯並びを描くためだけのものではありません。

診断に基づいて歯の移動を可視化し、治療の各段階を検討し、実際の臨床へ反映させるための重要なツールです。

最終的な歯並びを設計するだけでなく、そこへ至るまでの歯の移動経路と力学的な過程まで考えること。

 

当院では、デジタル矯正に関する専門知識を生かし、

お一人おひとりの歯列や骨格、咬合状態、治療目標に応じた矯正治療をご提案しています。

マウスピース矯正・ワイヤー矯正のいずれにおいても、装置の種類だけで治療の質が決まるわけではありません。

精密な診断と、それに基づく適切な治療設計が重要です。

治療の質にこだわり、お一人おひとりに適した矯正治療をご検討の方は、ぜひ当院の無料カウンセリングへお越しください。

 

 

シミュレーションの最終位置が気になる方へ

マウスピース矯正の治療シミュレーションを見て、

「この歯は少し動かしすぎでは?」

「なぜ前歯をここまで圧下するの?」

「犬歯をなぜ反対方向まで回しているの?」

と疑問に思った場合には、担当医に確認してみましょう。

意図的なオーバーコレクションである可能性があります。

その際には、

  • どの移動に対するオーバーコレクションなのか
  • なぜ必要なのか
  • 実際にはどの程度の移動を目標としているのか
  • 治療途中でどのように確認するのか

まで説明を受けると、治療計画を理解しやすくなります。

これから矯正治療を検討する場合にも、最終シミュレーションがきれいかどうかだけを見るのではなく、その歯の移動が実際に再現可能なのかを考えることが重要です。

そのためには必要に応じて精密検査を行い、

  • 歯並び
  • 歯根
  • 歯槽骨
  • 骨格
  • 噛み合わせ
  • 顔貌
  • 横顔

まで総合的に診断します。

すでに治療中で、

「シミュレーションと実際の歯並びが違う」

「同じ歯で何度もアライナーが浮く」

「追加アライナーを何度も繰り返している」

「オーバーコレクションと言われたけれど理由が分からない」

といった疑問がある場合には、現在の治療計画について説明を受ける方法もあります。

矯正治療では、きれいなシミュレーションを作ることよりも、その計画を実際の口腔内でどこまで再現できるかを予測し、必要な補正を加えることが重要です。


参考文献

  • 日本矯正歯科学会 診療ガイドライン
  • American Association of Orthodontists Clinical Guidelines
  • 厚生労働省 歯科口腔保健関連情報
  • 『THE ALIGNER ORTHO アライナー矯正治療の最適解:ALIGNER RADIO BOOK』
  • 『アライナー矯正歯科治療』
  • Husain F, et al. Effectiveness and accuracy of clear aligners in treatment of deep bite: a systematic review. Clinical Oral Investigations. 2025.
  • Evaluating the Clinical Success of Clear Aligners for Rotational Tooth Movements in Adult Patients: A Systematic Review. 2025.
  • Clear aligner therapy: a scoping review of treatment prediction, clinical effectiveness, and limitations. 2026.
  • Clear Aligners in Extraction-Based Orthodontic Treatment: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2025.
  • Predictability of mesiodistal movement of upper and lower molars with clear aligners: a systematic review. 2025.
  • Jin X, et al. Predictability of anterior teeth intrusion overcorrection design and its influencing factors: deep bite correction with Invisalign. Clinical Oral Investigations. 2025.
  • Naraghi S, et al. Relapse tendency after orthodontic correction of upper front teeth retained with a bonded retainer.
  • Martin C, et al. Retention procedures for stabilising tooth position after treatment with orthodontic braces. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2023.

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監修歯科医師

熊本サニースマイル矯正歯科
院長 中西正光

資格・所属学会等

資格

  • 日本デジタル矯正歯科学会 認定医

所属学会

  • 日本矯正歯科学会
  • 日本デジタル矯正歯科学会
  • 九州矯正歯科学会
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会

認定・実績等

  • Invisalign(インビザライン) プラチナエリートプロバイダー
  • Angel Aligner(エンジェルアライナー) 症例実績表彰
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