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デンタルモニタリングでは何を確認している?

2026.10.12

デンタルモニタリングでは何を確認している?AIを活用した矯正治療の遠隔チェックを解説

はじめに

マウスピース矯正を始めると、

「定期的にスマートフォンで歯の写真を撮って送ってください」

と案内されることがあります。

これは単に、治療経過を記録するために写真を撮っているわけではありません。

DentalMonitoring(デンタルモニタリング)などの遠隔モニタリングシステムでは、患者さまが自宅で撮影した口腔内画像を利用して、アライナーが歯にきちんと適合しているか、予定どおり治療が進んでいるか、アタッチメントなどに異常がないかといった項目を継続的に確認します。

DentalMonitoringの公式情報では、アライナー治療における適合状態(seat/unseat)、アタッチメントやボタンの脱離に加え、前歯部・抜歯スペースの閉鎖、ブラックトライアングル、オーバージェット、オーバーバイト・開咬、正中偏位などがモニタリング対象として挙げられています。

特にマウスピース矯正で重要なのが、「シミュレーション上では動いている」ことと「実際の歯が動いている」ことは同じではないという点です。

治療開始時には、コンピューター上で歯を少しずつ動かした治療計画を作成します。

しかし実際の口腔内では、

  • アライナーの装着時間
  • 歯の移動の難しさ
  • アタッチメント
  • 顎間ゴム
  • 歯の形
  • 歯根や歯槽骨
  • 患者さまごとの生物学的反応

などによって、計画と実際の歯の動きにズレが生じることがあります。

そのズレをできるだけ早く発見することが、デンタルモニタリングの大きな目的のひとつです。

ただし、ここで非常に重要なことがあります。

デンタルモニタリングは、AIに矯正治療を任せるシステムではありません。

AIは大量の画像を解析して変化や異常の可能性を検出するための補助ツールです。実際の治療計画を立て、必要に応じて画像を確認し、治療方針を判断するのは歯科医師です。公式情報でも、DentalMonitoringは医療従事者の監督下で使用するシステムとされています。

この記事では、デンタルモニタリングで実際に何を確認しているのか、AIはどこまで分かるのか、どのようなメリットがあるのか、そして遠隔モニタリングだけでは確認できないことまで詳しく解説します。


デンタルモニタリングとは?

デンタルモニタリングとは、スマートフォンなどで定期的に口腔内を撮影し、その画像を利用して矯正治療の経過を遠隔で確認するシステムです。

代表的なシステムのひとつがDentalMonitoringです。

患者さまは専用アプリと撮影用装置などを利用して、自宅で歯の画像を撮影します。

撮影した画像はシステムへ送信され、AIによる画像解析などを利用しながら治療経過を確認します。

つまり、

「次回来院するまで何も確認できない」という従来の矯正治療の空白期間を、遠隔モニタリングによって補う

という考え方です。


従来の矯正治療との違い

従来の矯正治療では、基本的に患者さまが来院したときに口腔内を確認します。

たとえば6週間ごとの来院であれば、

来院 → 6週間 → 来院

という流れになります。

もし来院から2週間後にアライナーが合わなくなっていたとしても、患者さまが気づかなければ、次の来院までそのまま進んでしまう可能性があります。

遠隔モニタリングを使用して定期的にスキャンすれば、

来院 → スキャン → スキャン → スキャン → 来院

というように、来院と来院の間にも治療経過を確認できます。

重要なのは、

来院回数を減らすことだけがデンタルモニタリングの目的ではない

ということです。

むしろ、治療途中の小さな変化を早い段階で見つけられることに大きな意味があります。


① アライナーがきちんとはまっているか

マウスピース矯正で特に重要なのが、アライナーの適合状態です。

マウスピース型矯正装置は、現在の歯の位置と少し異なる形に作られています。

アライナーが元の形へ戻ろうとすることで歯に力が加わり、少しずつ歯が移動します。

しかし、歯が予定どおり動かなければ、歯とアライナーの間に隙間が生じることがあります。

これを一般的に、

アンシート(unseat)

あるいは、

トラッキング不良

などと表現します。

DentalMonitoringでは、このアライナーのseat/unseatがモニタリング対象になっています。


「トラッキング」とは?

マウスピース矯正でいうトラッキングとは、簡単にいうと、

実際の歯の移動が、アライナーの治療計画についてきている状態

です。

反対に、計画上の歯の位置と実際の歯の位置にズレが生じると、アライナーが十分に適合しなくなります。

たとえば、

  • 犬歯だけアライナーが浮いている
  • 前歯の先端とアライナーの間に隙間がある
  • 奥歯だけアライナーがはまっていない

といった状態です。

この小さなズレを早期に発見することが重要です。

2026年に623人・3,323件の評価を解析した多施設研究では、DentalMonitoringのAIによるアライナーのseat/unseat判定は、二値判定で感度93.2%、特異度86.2%でした。特に「問題のある不適合を見逃さない」方向では高い性能が報告されています。

ただし、これはAIの判断が100%正しいという意味ではありません。


② アライナーが浮いていないか

アライナーが歯から浮いている状態は、マウスピース矯正では重要なサインです。

少しの浮きであれば経過観察できる場合もあります。

一方、浮きが徐々に大きくなっている場合には、

歯の移動が計画に追いついていない可能性

があります。

ここで重要なのが「時間経過」です。

1回の写真だけを見るより、

  • 先週
  • 今週
  • 来週

と継続的に比較することで、

「改善しているのか」

「変わっていないのか」

「徐々に悪化しているのか」

を確認できます。

デンタルモニタリングの大きな特徴は、一時点の状態ではなく、治療経過を連続的に観察できることです。


③ 次のアライナーへ進んでよい状態か

マウスピース矯正では、

「7日ごと」

「10日ごと」

など、一定期間ごとに次のアライナーへ交換する方法があります。

しかし、本来重要なのは、

何日経過したかではなく、歯がそのステージについてきているか

です。

歯の動きが遅れているにもかかわらず次々と新しいアライナーへ交換すると、計画と実際の歯の位置のズレがさらに大きくなる可能性があります。

遠隔モニタリングを利用することで、アライナーの適合状態などを確認しながら次のステージへ進むかを判断する運用が可能になります。DentalMonitoringの公式サイトでも、アライナーの不適合を検出し、次のアライナーへ進むタイミングを管理する用途が説明されています。


④ アタッチメントが外れていないか

マウスピース矯正では、歯の表面に小さな突起を付けることがあります。

これをアタッチメントといいます。

アタッチメントは単なる「マウスピースの滑り止め」ではありません。

形や位置によって、

  • 歯を回転させる
  • 歯を引っ張り出す
  • 歯根をコントロールする
  • アライナーを保持する

など、さまざまな役割を持っています。

そのため、重要なアタッチメントが外れると、予定していた歯の移動が起こりにくくなることがあります。

DentalMonitoringでは、アタッチメントの脱離もモニタリング対象になっています。


アタッチメントが1個取れたらすぐ来院が必要?

必ずしもそうとは限りません。

アタッチメントの重要性は、その歯に予定している移動によって異なります。

たとえば、そのアタッチメントが現在のステージで重要な役割を持っている場合には、早めの再装着が必要になることがあります。

一方、治療計画上すぐに大きな影響がない場合には、次回来院時に対応できることもあります。

つまり重要なのは、

「アタッチメントが取れたか」だけでなく、「そのアタッチメントが現在どのような役割を持っているか」

です。


⑤ 顎間ゴム用のボタンなどが外れていないか

マウスピース矯正では、上下の歯にゴムをかける顎間ゴムを使用することがあります。

そのために歯へボタンなどを装着することがあります。

ボタンが外れてしまえば、顎間ゴムを予定どおり使用できません。

DentalMonitoringではボタンの脱離もモニタリング対象です。

顎間ゴムは、

  • 上下の前後関係
  • 犬歯関係
  • 臼歯関係
  • 正中
  • 噛み合わせ

などを調整するために重要な場合があります。

そのため、装置の異常を早く発見することにも意味があります。


⑥ スペースが予定どおり閉じているか

矯正治療では、歯と歯の間のスペースを閉じることがあります。

たとえば、

  • 抜歯したスペース
  • すきっ歯
  • IPRで作ったスペース

などです。

DentalMonitoringでは、前歯部のスペース閉鎖や抜歯スペースの閉鎖もモニタリング対象として挙げられています。

スペース閉鎖では、

「隙間が小さくなったか」

だけを見るわけではありません。

実際の矯正治療では、

  • 前歯がどの程度後退したか
  • 奥歯がどの程度前方へ移動したか
  • 歯が傾いていないか
  • 歯根がついてきているか

なども重要です。

そのため、遠隔画像だけではなく、必要に応じてレントゲンや口腔内診査なども組み合わせます。


⑦ オーバージェットを確認する

オーバージェットとは、上下の前歯の前後的な距離です。

一般的には「出っ歯」の程度を評価するときにも使用します。

DentalMonitoringでは、対応するモニタリング機能でオーバージェットの変化を追跡できます。

たとえば出っ歯の治療では、

「前歯が並んだか」

だけではなく、

上の前歯と下の前歯の前後関係がどのように変化しているか

を見る必要があります。


⑧ オーバーバイト・開咬を確認する

オーバーバイトとは、上下の前歯の垂直的な重なりです。

上の前歯が下の前歯を深く覆っている状態を「過蓋咬合」、上下の前歯が噛み合わず隙間がある状態を「開咬」と呼びます。

DentalMonitoringでは、オーバーバイト・開咬の変化もモニタリング対象として示されています。

マウスピース矯正では、治療途中で奥歯の噛み合わせや前歯の垂直的位置が変化することがあります。

そのため、

歯が並んでいるかだけではなく、上下の歯がどう噛んでいるか

を確認することが重要です。


⑨ 正中がどのように変化しているか

正中とは、上の前歯の中心と下の前歯の中心の位置関係です。

治療計画によっては、上下の正中を合わせることを目標にします。

DentalMonitoringでは正中偏位の変化を追跡する機能もあります。

特に、

  • 左右で抜歯条件が異なる
  • 顎間ゴムを使用している
  • 左右でスペース量が異なる

場合には、正中の変化を継続的に確認することが重要になることがあります。


⑩ ブラックトライアングルの変化

歯をきれいに並べると、歯と歯の間に黒い三角形の隙間が見えることがあります。

これをブラックトライアングルと呼びます。

DentalMonitoringではブラックトライアングルもモニタリング対象として挙げられています。

ブラックトライアングルは、

  • 歯の形
  • 歯槽骨の高さ
  • 歯間乳頭
  • 歯根の角度
  • 接触点の位置

などによって生じます。

治療途中でブラックトライアングルが出現した場合には、その原因を評価し、必要に応じてIPRや歯根角度の調整などを検討します。


⑪ 口腔衛生状態

矯正治療中は、歯並びを治すことだけでなく、歯と歯肉を健康に保つことが非常に重要です。

遠隔モニタリングでは、口腔内画像から口腔衛生上の問題を検出する用途も研究されています。

2024年に公表された臨床研究では、DentalMonitoringのAIによる口腔衛生・歯肉粘膜関連項目の検出能力が、実際の臨床診査と比較されています。

また、AIによる個別通知を利用した群で口腔衛生状態の改善を検討した臨床研究も報告されています。

ただし、

写真だけですべての虫歯や歯周病を診断できるわけではありません。

ここは非常に重要です。


⑫ ワイヤー矯正でも使用できる

デンタルモニタリングというと、マウスピース矯正専用と思われることがあります。

しかし、ワイヤー矯正でも使用できます。

DentalMonitoringでは、ブラケット治療について、

  • ブラケットの脱離
  • 結紮の脱離
  • セルフライゲーションブラケットのクリップ
  • ワイヤーや補助装置の状態

などがモニタリング対象として挙げられています。

2026年には、AIによるブラケット脱離、セルフライゲーションブラケットのクリップ開放、結紮の脱離の検出性能を評価した研究も報告されています。

つまり、

遠隔モニタリングはアライナーだけでなく、ワイヤー矯正にも応用できる技術

です。


AIは歯が何mm動いたかまで分かる?

DentalMonitoringには、画像を利用して歯の移動を追跡し、3Dモデルを再構成する技術もあります。

実際に、DentalMonitoringから生成された3Dモデルと口腔内スキャナーによるデジタルモデルを比較した臨床研究も行われています。

これによって単純な写真比較だけではなく、

歯がどのように移動しているかを定量的に追跡する

方向へ技術が進んでいます。

ただし、口腔内スキャナーやCBCTとまったく同じ情報が得られるわけではありません。

目的に応じて使い分ける必要があります。


AIが全部判断しているの?

ここは患者さまに誤解されやすいポイントです。

「AIで矯正を管理しています」

というと、AIが自動的に治療している ように聞こえるかもしれません。

しかし、そうではありません。

DentalMonitoringは、患者さまが撮影した画像をAIで解析し、設定された条件に応じて異常の可能性を検出します。

そして、その情報を歯科医師が治療管理に利用します。

つまり、

AIは「異常を見つける補助役」であり、治療方針を決める責任主体は歯科医師

です。

2026年の研究でも、AIによるアライナー・口腔衛生関連の検出は臨床利用可能と評価された一方、局所的な問題の特定では精度が低下し、担当する矯正医による継続的な監督が必要と結論づけられています。


デンタルモニタリングで「分からないこと」もある

遠隔モニタリングには限界があります。

スマートフォン画像だけでは十分に評価できないものがあります。

たとえば、

  • 歯根の位置
  • 歯根吸収
  • 歯槽骨の状態
  • 埋伏歯
  • 顎関節
  • レントゲンで確認する必要がある病変
  • 詳細な歯周ポケット
  • 触診が必要な異常
  • 画像で確認しにくい虫歯

などです。

歯冠が予定どおり動いているように見えても、

骨の中で歯根がどのような位置にあるかは、口腔内写真だけでは十分に判断できません。

そのため、デンタルモニタリングを使用していても、必要なタイミングで実際に来院して診察や検査を受ける必要があります。


「毎週写真を送っているから来院しなくていい」ではない

デンタルモニタリングを導入すると、来院間隔を適切に調整できる場合があります。

実際、2024年のシステマティックレビューでは、通常の矯正管理にDentalMonitoringを追加することで、対面診療回数が平均1.68〜3.5回程度減少した研究が報告されています。

別のシステマティックレビュー・メタ解析でも、アライナー治療における対面診療回数の減少が報告されています。

一方で、治療期間そのものが短くなるという十分なエビデンスはありません。

したがって、

デンタルモニタリング=通院不要

ではありません。

より正確には、

必要なタイミングで来院し、それ以外の期間も遠隔で治療経過を確認する

という使い方です。


デンタルモニタリングの本当のメリットは「早期発見」

遠隔モニタリングのメリットとして、

「通院回数が少なくなる」

ことが注目されがちです。

もちろん、それもメリットのひとつです。

しかし、矯正治療の観点ではもっと重要な意味があります。

それが、

トラブルの早期発見

です。

たとえばアライナーが合わなくなったとします。

次回来院が2か月後であれば、患者さまが気づかなければ2か月間そのまま進む可能性があります。

しかし毎週スキャンしていれば、より早い段階で変化に気づける可能性があります。

矯正治療では、

小さなズレの段階で修正するほうが、大きくズレてから修正するより対応しやすい

ことがあります。


トラッキング不良を早く見つけることがなぜ重要?

マウスピース矯正では、1枚のアライナーで生じたズレが、その後のアライナーにも影響する可能性があります。

たとえば10枚目である歯が十分に動いていないとします。

そのまま11枚目、12枚目、13枚目へ進むと、アライナー側の予定位置と実際の歯の位置との差が徐々に大きくなることがあります。

その結果、

  • アライナーが大きく浮く
  • アタッチメントが十分に機能しない
  • 予定した移動が起こらない
  • 追加アライナーが必要になる

可能性があります。

つまり、

デンタルモニタリングの価値は、ズレが大きくなってから発見するのではなく、小さいうちに気づける可能性を高めること

にあります。


デンタルモニタリングを使えば追加アライナーはなくなる?

いいえ。

遠隔モニタリングを使用していても、追加アライナーが必要になることはあります。

歯の移動には生物学的な個人差があり、すべての歯がシミュレーションどおり100%動くわけではありません。

遠隔モニタリングの目的は、

追加アライナーを絶対に不要にすることではなく、計画と実際の歯の移動のズレをできるだけ早く把握すること

です。

2024年のシステマティックレビューでも、DentalMonitoringによってアライナー適合が改善する可能性は示された一方、治療期間や緊急来院を明確に減少させる十分なエビデンスは確認されていません。


デンタルモニタリングの精度は100%ではない

AIを使用していると聞くと、

「人間より正確なのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、AIにも誤検出があります。

実際、2025年までのAIを利用した遠隔矯正モニタリング研究をまとめたレビューでは、歯の移動追跡や口腔衛生管理などへの有用性が報告される一方、AIによる判断の再現性や精度には項目によってばらつきがあり、独立した検証がまだ必要とされています。

したがって、

AIの判定だけを見て治療を進めるのではなく、矯正医が画像や治療計画と照らし合わせて判断することが重要

です。


写真の撮り方も重要

遠隔モニタリングは画像を解析するシステムです。

そのため、元になる画像の品質も重要です。

たとえば、

  • 歯が十分に写っていない
  • 唇や頬で歯が隠れている
  • 撮影角度が大きくずれている
  • アライナーの辺縁が見えない

といった場合には、正確な評価が難しくなる可能性があります。

専用の撮影装置などを使用するのは、毎回できるだけ同じ条件で口腔内を撮影するためでもあります。


デンタルモニタリングと定期診察は役割が違う

デンタルモニタリングと来院診察は、どちらか一方を選ぶものではありません。

それぞれ役割が異なります。

デンタルモニタリングは、

「頻繁に変化を確認すること」

が得意です。

一方、来院診察では、

  • 直接歯を触る
  • 歯の動揺を確認する
  • 歯周組織を診察する
  • 咬合を直接確認する
  • 必要に応じてレントゲンを撮影する
  • IPRを行う
  • アタッチメントを付け直す
  • ワイヤーを調整する

といったことができます。

つまり、

遠隔モニタリングと対面診療を組み合わせることで、それぞれの長所を利用する

という考え方です。


よくある質問 Q&A

Q1. デンタルモニタリングでは何を確認していますか?

マウスピース矯正では主に、アライナーの適合、トラッキング不良、アタッチメントやボタンの脱離などを確認します。

さらにシステムの設定・機能によって、スペース閉鎖、オーバージェット、オーバーバイト・開咬、正中偏位、ブラックトライアングルなどの変化を追跡できます。

Q2. AIが治療方針を決めているのですか?

いいえ。

AIは画像解析によって変化や異常の可能性を検出する補助ツールです。

実際の治療計画や臨床判断は、担当する歯科医師が行います。

Q3. 毎週スキャンしていれば通院しなくても大丈夫ですか?

いいえ。

遠隔モニタリングでは確認できない歯根、歯槽骨、歯周組織などの問題があります。

必要なタイミングでは対面診察やレントゲン検査などが必要です。

Q4. デンタルモニタリングを使うと治療期間は短くなりますか?

現在の研究では、対面診療回数を減らせる可能性は比較的支持されていますが、治療期間そのものを明確に短縮するという十分なエビデンスはありません。

Q5. アライナーが少し浮いていたら治療失敗ですか?

必ずしもそうではありません。

わずかな不適合であれば経過を確認する場合もあります。

重要なのは、どの歯でどの程度の不適合があり、それが時間とともに改善しているのか、悪化しているのかを評価することです。


歯列矯正専門医からのアドバイス

デンタルモニタリングについて、

「AIが毎週チェックしてくれるから安心」という理解だけでは少し足りません。

私たちが本当に確認したいのは、

「アライナーがはまっているか」ではなく、「治療計画で予定した歯の移動が実際の口腔内で起きているか」

です。

矯正治療では、コンピューター上で非常にきれいな治療シミュレーションを作ることができます。

しかし、

シミュレーションは治療結果そのものではありません。

たとえば画面上では犬歯が2mm動いていても、実際の犬歯が同じように動くとは限りません。

歯冠は動いていても歯根が十分についてきていない可能性もあります。

予定していた圧下が起こらず、別の歯が挺出している可能性もあります。

だからこそ、

治療計画を作ることと、その計画どおり進んでいるかを確認することは別の作業 なのです。

デンタルモニタリングは、この「確認」の頻度を高めるために非常に有用なツールです。

一方で、口腔内写真だけでは歯根や歯槽骨の状態を直接確認できません。

そのため、

  • 顔貌分析
  • 横顔
  • セファロ分析
  • 歯根
  • 歯槽骨
  • 噛み合わせ

などを含めた総合診断の代わりになるものではありません。

治療開始時に適切な診断を行い、治療目標を設定する。

その治療計画に沿って歯を動かす。

そしてデンタルモニタリングなどを利用して、実際の歯が計画についてきているかを確認する。

必要であれば治療途中で修正する。

診断 → 治療計画 → 治療 → モニタリング → 必要に応じた修正

という一連の流れが重要です。

デンタルモニタリングは矯正医の代わりではありません。

矯正医が患者さまの口腔内をより細かい間隔で観察するための「もう一つの目」として利用する技術

と考えると分かりやすいでしょう。

 

歯列矯正専門医 中西正光


デンタルモニタリングを使用した矯正治療を検討している方へ

マウスピース矯正では、治療開始時のシミュレーションがきれいであることだけで治療の質は決まりません。

重要なのは、

その計画が実際の口腔内で再現されているかを治療中に確認すること です。

遠隔モニタリングを使用する場合には、

「どのくらいの頻度でスキャンするのか」

「誰がスキャン結果を確認しているのか」

「トラッキング不良が出た場合にどう対応するのか」

「どのタイミングで実際に来院するのか」

まで確認しておくとよいでしょう。

初診相談では、まず現在の歯並び、噛み合わせ、口元についてのお悩みを確認します。

具体的な治療方法を判断するためには、必要に応じて精密検査を行い、

  • 歯並び
  • 歯根
  • 歯槽骨
  • 骨格
  • 噛み合わせ
  • 顔貌
  • 横顔

などを総合的に診断します。

デジタル技術やAIは、矯正治療をより細かく管理するための有用な道具です。

しかし、最も重要なのは最新のシステムを使用していることではありません。

適切な診断に基づいて治療計画を立て、その計画と実際の歯の動きのズレを継続的に確認し、必要なときに適切に修正することです。


参考文献

  • 日本矯正歯科学会 診療ガイドライン
  • American Association of Orthodontists Clinical Guidelines
  • 厚生労働省 歯科口腔保健関連情報
  • 『THE ALIGNER ORTHO アライナー矯正治療の最適解:ALIGNER RADIO BOOK』
  • 『アライナー矯正歯科治療』
  • Sangalli L, Alessandri-Bonetti A, Dalessandri D. Effectiveness of dental monitoring system in orthodontics: A systematic review. J Orthod. 2024;51(1):28-40.
  • Clinical evaluation of Artificial Intelligence Driven Remote Monitoring technology for assessment of patient oral hygiene during orthodontic treatment. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2024.
  • In-vivo evaluation of Artificial Intelligence Driven Remote Monitoring technology for tracking tooth movement and reconstruction of 3-dimensional digital models during orthodontic treatment. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2023.
  • Clinical Applications of Artificial Intelligence in Teleorthodontics: A Scoping Review. Medicina. 2025.
  • Accuracy of DentalMonitoring’s artificial intelligence in detecting aligner tracking issues: a retrospective multi-centric study. BMC Oral Health. 2026.
  • DentalMonitoring. Information for Use / Medical Device Disclaimer.

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監修歯科医師

熊本サニースマイル矯正歯科
院長 中西正光

所属学会等

  • 日本矯正歯科学会
  • 日本デジタル矯正歯科学会
  • 九州矯正歯科学会
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
  • インビザラインドクター

略歴

  • 久留米大学附設高等学校
  • 東京歯科大学卒業
  • 九州大学病院矯正歯科
  • 熊本県内大手医療法人の歯列矯正部門顧問

学会発表

  • Journal of Oral Biosciences Supplement 2018
    「Impaired store-operated Ca2+ entry in mouse salivary glands decreases the volume of saliva secretion」
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